こねないパン|混ぜて折りたたむだけ。シンプルだからおいしいパン作り
ciao! イタリア料理とパンの教室ラクッチーナサッチを横浜で主催してます。
料理家藤野幸子です。
「パンを作ってみたいけれど、こねるのが大変そう」
そんなふうに思ったことはありませんか?
実は、おいしいパンを作るために、必ずしも一生懸命こねる必要はありません。
私が作っているのは、材料を混ぜて、時間をおき、ときどき生地を折りたたみながら育てていく**「こねないパン」**。

力を入れて長時間こねなくても、外は香ばしく、中はしっとり、もちっとしたパンに焼き上がります。
簡単だから、こねないのではありません。
時間と発酵の力を上手に借りるから、たくさんこねなくてもおいしくなる。
これは、私が料理やパン作りでずっと大切にしている
「シンプルだから、おいしい。」
という考え方にもつながっています。

こねないパンとは?
一般的なパン作りでは、生地をしっかりこねてグルテンを作っていきます。
こねないパンでは、材料を混ぜたあと、生地を休ませる時間や発酵、折りたたみを利用して、生地を少しずつ整えていきます。
ずっと手を動かし続けなくても大丈夫。
人が頑張る部分を少し減らして、時間に仕事をしてもらうパン作りです。
これならパン作りが初めての方や、こねる作業が負担に感じる方にも取り入れやすくなります。

「こねない=手抜き」ではありません
「こねないと、本当においしいパンになるの?」
初めての方は、そう思われるかもしれません。
でも、パン作りで大切なのは、こねる回数だけではありません。
水分をしっかり粉になじませること。
生地を休ませること。
発酵を待つこと。
そして必要に応じて、生地をやさしく折りたたむこと。
こうした工程を重ねることで、生地は少しずつ変化していきます。
パン作りというと「たくさんこねなくてはいけない」と思いがちですが、生地の変化を見ることの方がずっと大切だと私は思っています。

おいしく作るポイント① 混ぜた直後に判断しない
こねないパンの生地は、最初はベタベタしていたり、まとまりが悪く感じたりすることがあります。
ここで、
「失敗したかも」
と思わなくて大丈夫です。
粉が水分を吸って時間がたつと、生地の状態は変わっていきます。
すぐに粉を足したり、必要以上に触ったりせず、まずは生地を休ませてあげること。
これも、おいしいパンを作る大切なコツです。
おいしく作るポイント② 折りたたむのには意味があります
私のこねないパンでは、生地を休ませながら「折りたたむ」という作業を取り入れています。
難しい作業ではありません。
生地を持ち上げて折る。
また休ませる。
この繰り返しで、生地が少しずつなめらかになり、扱いやすくなっていきます。
最初の生地と、時間をおいて折りたたんだあとの生地を比べてみると、その変化がよく分かります。
この変化を見るのも、パン作りの楽しさのひとつです。
おいしく作るポイント③ 発酵は「時間」だけを見ない
レシピに「○分発酵」と書いてあると、つい時計ばかり見てしまいます。
でも、発酵の進み方は季節や室温、生地の温度などによって変わります。
夏と冬では同じ時間でも、生地の状態はまったく同じではありません。
だから私は、時間を目安にしながら、生地そのものを見ることを大切にしています。
ふくらみ方はどうかな。
表面はどう変わったかな。
触った感じはどうかな。
こうして少しずつ生地を見る習慣がつくと、パン作りはぐっと面白くなります。

成形も頑張りすぎなくていい
パンというと、きれいに丸めたり、形を整えたりする工程が難しそうに感じるかもしれません。
でも、パンによっては細かく成形しなくても大丈夫。
たとえばチャバタのようなパンなら、生地の中にできた気泡をなるべく残しながら、やさしく扱うことが大切です。
きれいな形にすることより、
「おいしく焼き上げるために、この生地をどう扱うか」
を考えてみてください。
少しくらい形が不揃いでも、それも手作りパンのいいところです。

外はカリッ、中はもちっと
高温のオーブンで焼き上げると、表面は香ばしくカリッと。
中には水分が残り、しっとり、もちっとした食感になります。
焼きたてのパンを割ったときの香りは格別です。
オリーブオイルを少しつけるだけでもおいしいですし、生ハムやチーズ、旬の野菜を合わせても。
料理と一緒に食卓に出せるのも、こうしたシンプルなパンの魅力です。

パン作りは、もっと自由でいい
長く料理やパンを教えていると、
「ちゃんと作らなくては」
「レシピ通りにしなくては」
と、一生懸命になりすぎている方に出会うことがあります。
もちろん、基本を知ることは大切です。
でも、基本が分かってくると、少しずつ余計な作業を減らすこともできます。
私自身、料理もパンも、経験を重ねるほどシンプルになってきました。
手をかけるところには、きちんと手をかける。
でも、必要のないことまで頑張らない。
素材と時間の力を借りる。
「頑張らなくても、おいしい」には、ちゃんと理由があります。
こねないパンは、それをとても分かりやすく教えてくれるパンだと思っています。
パン作りは難しそう、と諦めていた方にも、ぜひ一度作っていただきたいです。
焼きたてのパンがあるだけで、いつもの食卓が少しうれしくなります。
シンプルだから、おいしい。
これからも、家庭で無理なく作れて、また作りたくなる料理とパンをお伝えしていきます。

藤野幸子
La Cucina Sacchi
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